接客テクニック

接客業をしたことがない人や人見知りが激しい人にとって、接客ほど苦痛なものはないのではないでしょうか。

私は幸い独身時代から接客業に携わることが多く営業経験もあったためハードルはさほど高くはなかったのですが、いざマルシェ出店をしてテーブルという隔たりを挟むと途端に何を話せばいいのか分からなくなったことを覚えています。

何より自分の作るものを自分ではカワイイと思っているけれど同じように感じてくれる人がどれだけいるのか自信がなかったため、その不安が思いっきりオーラのように吹き出していたのだと思います。

どのお客様に対してもロボットのように同じような声掛けで商品の説明も一辺倒。だんだんとセリフのように話す文章が固定化されていました。

少しでも好意的に話を聞いてくれる人がいたらマシンガントークでしゃべりっぱなしになってしまうし、結果お客様も疲れてしまって話を聞くだけで去っていく……なんてこともありました。

何回目かの出店で、売ることより他の出店者さんを観察することに注力してみようと思いました。

周りを見てよく売れていそうな作家さんのやり取りをジッと見ていると、みなさん私とは違う余裕があります。

お客様と商品以外の話で盛り上がっているような場面もありました。
きっとファンの方ですでに信頼関係が結べているのだと感じました。

また近づいてきたお客様に対して軽く声掛けこそしても、しばらくは様子を見るだけで商品の説明などはしていません。
かと言って放っておいている訳ではなく、きちんとお客様の目線や動きを気付かれないようチラッと見て、良い頃合いで商品の説明を一言話す。そしてまたお客様の動向を注視する……の繰り返しをしながら、気になる一点をお客様が手に取ったときにすかさず鏡を自然な流れでお客様の前に置く。

接客のうまい人は話すことよりもお客様の動向をじっくりと観察し、お客様の立場になって求めていることをすくい取るように先回りして差し出すのです。

そう、接客の7割は話すことではないのです。

あと、これが一番大事なのですが、自分が販売する商品を堂々と自信を持ってお薦めする姿勢が絶対に必要です。

どうしてもお客様が上で自分は謙るようなイメージで接客しがちで、お客様の判断に委ねてしまいそうになりますが、実際はそうではなくお客様はプロにアドバイスを聞きたかったり、ポンと背中を押して欲しかったりしているのです。

薦める方が引いていたら、良いと思っていたその商品は実はそんなに良いものじゃないのかな?と、お客様は途端に不安になってしまうのです。

とは言え主役はあくまでお客様ですので、売れている人というのはフレンドリーに話しているように見せてもきちんと距離を取って自分の立場をわきまえています。

そして何よりお客様の目線で痒いところに手が届く、自分では気付かなかったような発見を与えてくれる、そんななんとも心地の良い接客をしているのです。
この本は、購入いただいたお客様に値段以上の満足を感じて欲しくて、接客のヒントを得ようと読んだものです。

この中に詰まっていることはすべてお客様の立場に立ちお客様目線で考えられていることです。

自分が接客してもらって心地良いなと思う対応をされたときを思い浮かべてみてください。
それはマニュアルで決められたような接客ではなく、心の通ったちょっとした気遣いだったりします。

自分がしてもらって気持ちが良かったことをお客様にもして差し上げれば良いだけの簡単な話なのですが、これがなかなか私にはできませんでした。

今でも、“あのときこうしてあげていたら”とか、“こんな風にご提案できていたら”と、気の利かない自分を反省することが多く至らない接客ではありますが、常にお客様に心地良くなっていただくには?という視点で接客することを心がけています。

また、これは私独自のポリシーなのですが、お客様自身も気付いていないような別の魅力を引き出して差し上げるということにも注力しています。

自分で自分に似合うと思っているものは意外にレパートリーが狭かったりするもの。
一人で考えていたらどうしても趣味が偏ってしまうのです。

そんなときに別の視点からアドバイスしてみることは、お客様自信も気づいていなかった新たな自分を発見することに繋がるのではないかと思っています。

でもこれは決して無理強いしてはいけません。
あくまで、さらりと流す程度で提案することがベスト。
そこでハッと意表を突かれて何かに目覚めたようになるお客様もいらっしゃいますが、そうじゃないお客様もいらっしゃいます。

そうじゃない、自分の好きなものが決まっているお客様には、お客様の好きなものを一緒に大切にする気持ちで、心の中では決まっているそのものを迷いなく選べるよう、そっと背中を押すのです。

これは私自身がそう接客してもらってとても心地良かったので、自分もお客様にそんなステキな接客ができるようになりたいと思って心がけていることなのです。

ですから接客に自信がない人は、まず自分が接客されることをおすすめします。

それもそこそこの価格帯の商品を扱っているお店や、商品展開にこだわりが見えるセンスの良いお店で体験してみると良いです。

高級なものを扱うお店はお客様も求めるレベルの高い人が来られます。そのためスタッフも思慮深く観察眼に優れた人が多いので参考になります。

商品ラインナップがセンスの良いお店も同様で、他ではなかなか見ないようなその店ならではの選りすぐられたアイテムでお店として成り立っているということは、お客様の視点を大事にされている証拠でもあるので必ず参考になります。

とにかく上手な接客に決まったテクニックなどありません。

ただお客様の立場になって、お客様に喜んでいただけることをいくつ増やせるか、その一点に集中すれば自ずと信頼される接客ができるのだと思います。

私もお客様から信頼される接客ができるよう、また今日からがんばらなければ。

人と人とのコミュニケーションって、そんなに悪いものじゃないです。

接客が嫌いなあなたも、きっとお客様と心が通ったときの快感を知ったら接客が楽しくなるはず。

誰かに喜んでもらえる経験ほど貴重なものはないのですから。

cherouite〜シャルウィット〜

切りっぱなしで仕上げた布のアクセサリー モロッコの伝統的なラグ、ボ・シャルウィットの 自由でカラフルなデザインとの出会いから cherouiteは始まりました。

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